エンド・ぺリオ(歯内歯周病変)

こんにちは、井関です。

今回は、一つ思い出深い症例の話をしたいと思います。

患者様は、初診時左下の奥歯が グラグラする、疼く、歯茎が腫れる、歯茎から出血、膿が出る、口臭がある、物が詰まると、 まさに典型的な歯周病の症状ということでした。
それで、何年もの間悩まされ、いくつもの歯科医院で歯周病治療をしたけど治らず、 もう抜歯するしかないと言われたそうです。
でも、抜歯をしたくないという事で来院されました。

お口の中を拝見すると、おっしゃるように左下の一番奥の歯は上記の症状を呈していました。
しかし、他の歯は虫歯もなく歯石もついてなく歯周ポケットもなく、物凄く歯磨きが上手なんです。
左下の一番奥の歯を除けば、はっきり言ってパーフェクト!

何故、そんな人が一本の歯だけ歯周病になってしまうのでしょう?

まずはレントゲンを撮ってみました。

レントゲンを撮ってみると確かに骨が吸収してます。
赤矢印の先の黒い部分が骨が吸収している部分です。 かなり広範囲で、歯周ポケットは深い所では12ミリもありました。(通常は3ミリ以内です)
しかも横にグラグラ揺れるだけでなく、上下にも動いているのです。
患者様は、手で揺らすと抜けてしまいそうと言っていました。
完全に重度歯周病です。
抜歯と診断されても全然おかしくありません。


CTも撮ってみました。
レントゲンの時よりもはっきりと骨が吸収していることがわかると思います。(赤矢印の先)

でも、先ほども言いましたが、歯磨きも物凄く上手なのに、 何故この歯だけ重度歯周病になってしまったのでしょう?

最初は、やはり歯周病治療をまずやってみるかと思ったのですが、 どうしてもこの一本の歯だけが重度歯周病になっているのが解せなかったのです。
ここで、ある考えが浮かびました。

あ、これはもしかして、 エンド・ペリオ(歯内歯周病変)じゃないのか?

エンド・ペリオ(歯内歯周病変)というのは、 歯内、つまり歯の中である根管内に問題(細菌感染)があって、それが歯周、歯の外に 病気を引き起こす(細菌感染を広げて歯周病にする)、もしくは 歯周、歯の外に問題(歯周病)があって、それが歯内、歯の中である根管内に病気を引き 起こす、ことを言います。

これの診断は、根管内の神経が生きてるか死んでるかになります。
もし神経が生きていれば、ただの歯周病なのですが、 神経が死んでいれば、エンド・ペリオの可能性が高くなります。

調べてみると、この歯は神経が死んでいたのです。
そしてそこに細菌感染が起きて それによって歯周病になってしまったのです。
つまりこの歯は根管内に問題があるので、歯周病治療を何百回しても絶対に治らず、 根管治療をしないと治らないのです。

という事で、原因が分かったなら通常通り根管治療をすればよいだけなので始めました。
1回目の治療でマイクロスコープで根管内をしっかりと見て、徹底的に感染物質を除去し 消毒を繰り返したところ、2回目の来院時にはもう疼く感じは無くなり重たかった感じも 無くなったという事なので、根管充填をしました。
わずか2回で根管治療は終了しました。

根管充填後1ヶ月で歯のグラつきも無くなり普通に咬めるようになりました。
勿論、歯茎からの膿、出血も無くなりました。
ポケットも一番深い所で3ミリになりました。
その後の経過をレントゲンとCTで追ったのが下の写真です。
明らかな骨の改善が見られるかと思います。
診断を間違えずに出来たことが今回の治療の成功だと思いますが、短期間にこれだけの 改善が見られるとは、人間の身体って改めて凄いなと思いました。