アマルガム除去~MTAセメントリペア

こんにちは、井関です。

今回はちょっと珍しい症例をお見せ致します。

患者様は、左下の一番奥の歯とその前の歯の間に物が詰まる。
そこの歯茎に違和感があるとのことでした。

その二つの歯の間に隙間があったので、当然物は詰まります。
被せ物をやり直して、隙間を無くせば詰まるのは無くなるので話は簡単なのですが、歯茎に違和感、これはなんでだろうとレントゲンを撮るとこんな感じ。

歯の根のわきっぱらに何か詰め物があるではないですか。(赤矢印の先)
なんだこれ?と思ってレントゲンを見ていると、患者様が、これは10数年前にアメリカでアマルガムを詰めてもらったんですよ。
と、おっしゃいました。

歯茎の違和感はこのアマルガムという金属を根のわきっぱらに詰めてあることが原因です。
これをどうやって詰めるかというと、歯の中から詰めているのではないんです。
外科的に歯茎を開いて根の外から詰めて歯茎をもとに戻すという手法を取っているんですね。

アメリカでは10数年前でもこういう治療をするんだなとしげしげとレントゲンを眺めてましたが、じゃあどうやってこれを治そうか?いや、治せるのか?と色々なことを考えました。

少し治療の前にアマルガムについてお話をしたいと思います。

アマルガムというのは、1826年にフランスで使われたのが最初で、銀とスズの合金に銅や亜鉛を添加した粉末を、水銀で練った合金です。ここで、水銀???って思った方もいるでしょう。
日本では水俣病のせいで水銀=危険なもの、有害なものという認識がありますが、アマルガムに使われているのは無機水銀で、水俣病の原因となった有機水銀とは違います。
だから私が学生のころは、アマルガムは安全です。と習いましたし世界中で歯の詰め物として使われていました。

しかし現在、やはり金属アレルギー等の問題で良くないと言われています。
スウェーデン、デンマーク、イギリスでは使用禁止になっています。
アメリカでは現在でも使用されていますが、日本では今年から保険治療の項目から削除されました。
しかしながら、先ほど申しましたように学生時代には習ってるわけで、1970~80年代には日本全国でアマルガムを用いた治療はされているのです。

現在銀歯と言われている保険で使用されている金属は12%金銀パラジウム合金と言われている物で、12%金、20%パラジウム、銀が50%位、銅が16%位、その他亜鉛やガリウム等で出来ています。(細かくは金属メーカーによって違います)
ご存知ない方もいると思いますが、これは日本独自の物なのです。海外ではなかなかお目にかかれないものなのです。
普通に皆さんのお口の中に入っているわけですが、昨今この金属についても金属アレルギーの危険性が示唆されています。
ちなみにお口の中で銀でキラッと光っているのは12%金銀パラジウム合金で、黒っぽい銀はアマルガムです。こんな感じです。


さて、話を元に戻します。これをどうやって治すかということですが、先ほどのレントゲンをもう一度良く見てください。
矢印の先が黒くなっていることがわかります。
これは、根の周りの骨がとけている状態なのです。
やはりアマルガムを除去しないと歯茎の違和感は治らないわけです。

ということで、私が選択した治療法は、根の中からアマルガムを取り、そこにMTAセメントを充填するという方法です。
勿論、根の治療も行います。

これが除去したアマルガムです、約3ミリほどの大きさです。

レントゲンで見ると大きく見えますが、たった3ミリの大きさしかないんです。
勿論、これを除去するのにマイクロスコープの使用は必須です。

最後にセラミックの被せ物をして終了です。当初隣の歯との間にあった隙間もセラミックの被せ物で補正したので物も詰まらなくなりました。
MTAセメントを詰めてからたった1週間で、患者様は歯茎の違和感が全くなくなったと喜んでいました。
骨が溶けている所はこれから徐々に治っていくと思います。
いやー、やっぱりMTAセメントは凄いですね。