一年後CT撮ってみたら凄い治ってた!

こんにちは、井関です。

根管治療の世界において3種の神器と言われるものがあります。
マイクロスコープ、ニッケルチタンファイル、そしてCTです。

私の大好きなMTAセメントはここに入らないのが残念でしょうがないです。

ニッケルチタンファイルは使わないことも結構あるので、私の大好きなMTAセメントをここに入れてほしいと私は思ってます。

今回は、この中のCTの症例についてお話しさせていただきます。

患者様は、2日前に右上の歯に激痛があり来院されました。

まずはレントゲン検査を行いました。
以前にも言ったことがあるかもしれませんが、上下共に奥歯は周囲の骨が厚いのでレントゲンではなかなか細かい情報は得られません。
なんとなく矢印の先がモヤモヤして黒っぽい感じはありますが、はっきりとこれは悪い!とは言いづらいレントゲン像です。


そこでCTを撮ってみたところ、上顎右側第一大臼歯は根が3本あるのですが、その全ての根の先に黒い影(根尖病変)が見られました。(赤矢印)
間違いなくここが原因で痛いことがわかりました。


そして、歯の上方部に上顎洞という空間(副鼻腔)が存在するのですが、そこがスリガラス様にグレーになっているのがわかるかと思います。(黄矢印)
これは何かというと、上顎洞まで炎症が波及してることを示します。
上顎洞の上の方に黒い部分(白矢印)がありますが、通常はこのようにCTでは真っ黒に写ります。
CTで黒いということは空気がその部分にあるということです。

治療を始めたところ、一つの根管から大量の膿がダクダク出てきました。
これは、確かに相当痛みがあっただろうなと想像できました。
1回目に根管内を徹底的にきれいにし、膿が止まるまで根管内を洗浄し続けました。
2回目の治療は、2週間後でした。
その時には、痛みは収まってはいましたが、噛むと違和感が残っているとのことでした。
こういう時、最終的な薬(MTAセメント)を詰めますよと言うと、大体患者様は不安になるのですが、噛んだ時の違和感や、歯を叩いた時の響きはMTAセメントを詰めないと消えないこともあるので、2回目に根管充填をMTAセメントで行い終了です。

その後土台(ファイバーポスト)を立てて、型をとりセラミッククラウンを装着して終わりとなりました。
5回の治療で全て終了しました。

その後、経過観察をしていました。
度々レントゲンを取りましたが、やはり奥歯のレントゲンは写りが悪く、治っているのかどうかが判断つきませんでした。

治療前
治療後8ヶ月

どうでしょう?
違いがわかりますか?なんとなくモヤモヤした黒い部分が白っぽくなっているように見えますが、毎日レントゲン見ている人間でもこれは治った!と言い切れません。

じゃあ、CTを撮れば良いじゃないか?と思うかもしれませんが、CTは放射線の被曝量が多い為、頻繁に撮ってはいけないのです。
国際的にも、どうしてもCTを取らないと治療に差し支えるなどの理由がない限り、前回CTを撮ってから、少なくとも1年は空けるべきと言われています。
なので、1年を待って患者様も治っているかどうか確認したいと言われたので、先日CT撮影を行いました。

すると、根の先の黒い影は全て消え、スリガラス様になっていた上顎洞もきれいに治り、真っ黒になったのがわかるかと思います。
正直、1年でここまで完全に治るとは思いませんでした。


患者様も症状はないけど、ちゃんと治ってるか知りたいと言っていたので、きれいに治ってて良かったです。
実は患者様はお医者様でCTを見慣れている方なので、このCTを見た瞬間に、
「すごい!副鼻腔がきれいになってる!」
と驚いていました。 専門用語で言われたのは嬉しかったですね。

治療前と、1年後です。
明らかに違うことがわかるかと思います。

頻繁にCTを取ることは良くないことですが、やはりCTじゃないとわからないこともたくさんあるので、私の治療には欠かすことのできないツールですね。

今回は、1年待って撮ることが出来ましたが、こんなに良い結果が得られて良かったです。

治療前

治療後(1年後)


治療前

治療後(1年後)