CRACK(クラック)続き

こんにちは、井関です。

今回は前回に続き、歯の破折(ひび)についてお話ししたいと思います。
前回を読んでないとわからないこともありますので、是非前回を読んでからお読み下さい。

私たちは通常、破折(ひび)CRACK(クラック)と呼びます。

前回のブログでの症例はまだ軽症なクラックの話をしましたが、もう少しクラックが進むとどうなるかという話をしていきます。

いつも、私たち歯科医師はクラックが判明すると凄いがっかりするのです。
なぜならクラックが入った歯はたいていの場合、抜歯する以外ないからです。
7、8年前私はこのクラックの入った歯でもなんとか残そうといろんな方法を用い頑張ったのですが、クラックの入った奥歯は全て4年以内に抜歯になりました。 論文でも奥歯の治療後の5年生存率は0%となってます。
前歯は1歯のみ7年持っている方もいらっしゃいますが、ある特殊な条件下で持っているので例外中の例外と言えるでしょう。

進行したクラックは大きく分けると2つに分かれます。
1つは歯の並びに直角に走るクラック(赤線)
もう1つは歯の並びに平行に走るクラック(黒線)

歯の並びに直角に走るクラック(赤線)の特徴は、ほとんどが神経を抜いてる歯に入ります。
しょっちゅう見かけます。
このクラックは歯冠(歯の頭)から入る場合と歯の根っこの先から入る場合があります。
だいたい半々の割り合いで起こります。
以前にも書いてると思いますが、神経を抜くと歯の内部を削るので、必然的に歯が薄くなります。
なのでクラックが入って歯が割れやすくなります。
臼歯部では神経抜いてない歯と比べ7.4倍歯が割れやすくなります。
何度も書いてますが、神経はなるべく残した方が良いのです。

歯の並びに平行に走るクラック(黒線)の特徴は、ほとんどが神経を抜いてない歯に入ります。
そして必ず歯冠から入ります。
でもこのクラックはあまり見かけません。かなりレアです。
なんの治療もしてなく虫歯も歯周病にもなってない歯にクラックが入ることもあります。
下の写真がまさに真横にクラックが入り真っ二つに割れてしまった歯です。
小さな虫歯を白い詰め物で治してますが、わずかに歯を削った程度です。
こうなってしまうと治療法はありません、残念ながら抜歯する以外ないのです。


では、なぜたいして治療もしていない歯に、歯の並びに平行に走るクラックが起きてしまうのでしょうか?
原因は力です。
噛む力がものすごく強く、夜間に極度の歯ぎしりやくいしばりをしている人に多く見られます。
歯ぎしりや食いしばりを根本的に治す方法は今のところあまりありません。

前回にもお話しした通り、歯科医院で歯ぎしりや食いしばりがひどいと言われた方や、ご自身で自覚のある方は、ナイトガード(夜間に使用するマウスピース)を使用することをお勧めします。

マウスピースも大きく分けると2種類ありまして、柔らかい素材のものと硬い素材のものがあります。
柔らかい素材のものは、歯ぎしりや食いしばりには向いていません。
逆に睡眠中にもっと噛む力を発揮してしまう場合もあります。
柔らかい素材のものは、スポーツ用のものと思ってください。ラグビーやボクシングでしてるあれです。
市販でお湯で温めて歯に合わせるマウスピースがありますが、あれも柔らかいものなので、睡眠中に使用するのはやめた方が良いです。

硬い素材のものは、ナイトガード向きです。
ただし、きちんと歯科医師が調整をしてないとこれも良い結果が得られません。
その人、その人にあった噛み合わせを調整しないといけません。
なので、完全にオーダーメイドなわけです。市販のものとは全く違うものです。
当医院でも多くの方にナイトガードを使用していただいておりますが、今まで使ってたものとは全く違う。
下の顎がスムースに動く。
朝起きた時に肩や首の凝りが無くなった。
ナイトガード無しで寝るなんて心配でできない。
など多くの方に好評をいただいております。

歯ぎしりや食いしばりが気になる方、家族に勧められた方、一度使用してみたい方、是非、当院の歯科医師、衛生士にご相談ください。