ラバーダム防湿 生誕150周年

今回の話は、ラバーダム防湿のお話です。

ラバーダム防湿とは、ホームページを見ていただけるとお分かりになると思いますが、
根管治療において歯にラバーダムというゴムのシートをかけて、根管内に唾液が入らないようにする方法です。

唾液の中にはたくさんの細菌がいるので、唾液が根管内に入ると根管治療の成功率が下がってしまうのです。

根管治療において、ラバーダム防湿を行うことは私にとっては、最低限のルールというかマナーであると思っています。

例えば、料理人が、料理をする前に手を洗うことは当たり前、外科医が手術をする時にグローブをすることは当たり前な事と同じだと思っています。

今日、ラバーダム防湿は根管治療において行われていることが多いですが、
実はもともと歯に何かを詰めるときに歯に唾液が付かないようにする為に考えられた手法なのです。

唾液がつくと詰め物がくっつきづらくなるからです。
このことは実は多くの歯医者の先生でも知っていません。

ラバーダム防湿は歴史は古く、ニューヨークのBarnumという先生が、1864年に考案しました。
1864年って日本で言ったら、江戸時代ですよ!池田屋事件が起きた年ですよ!

そう今年でなんとちょうど150周年なのです。
それから、ちょっとずつマイナーチェンジをして現在の形になりました。

現在は、この5つがあればラバーダム防湿をすることが可能です。

【左上】ラバーダムクランプ/【右上】ラバーダムシート/【左下】ラバーダムパンチ/【下中央】フォーセップス/【右下(4つ)】ラバーダムクランプ
日本ではなかなか見ないラバーダム防湿ですが、アメリカでは、根管治療の専門医では90%以上行っています。


しかし、日本では日本歯内療法学会という根管治療の専門の学会の会員ですらラバーダム防湿を必ず行うという先生は5%程度しかいません。
これでは、日本の根管治療の先は見えません、非常に残念です。

先ほども言ったように根管治療にあたりラバーダム防湿を行うことは、ルールであり、マナーでもあると私は思っています。

更にラバーダム防湿を行うと、唾液が入らないようにするだけではなく、術者である私の視野が広くなり治療が本当にやりやすくなります。
今や、私にとってはラバーダム防湿は無くてはならない方法です。

最近思うことですが、先人たちが考えて今でも使われている物っていうのは、必ず何か良いという理由があるものだと実感しています。
マイクロスコープの様な最新の技術も勿論必要ですが、ベーシックも大切だと思います。
温故知新ですね。

マイクロスコープの可能性 – 逆根管充填材の除去

皆様、こんにちは。
井関です。 今回は久々に精密根管治療の症例の紹介です。

こちらのレントゲンの患者様は、根の治療を終えた後再発して、
2度も歯根端切除という根の先端を切る外科的な処置をしたそうです。

しかし、またもや再発して来院されました。歯茎からは毎日膿が出ていました。


黒矢印の根の先の黒い部分は膿がたまっている部分です。
赤矢印は歯根端切除後、根の先端の方を何らかの材料で埋めている部分です。
これを逆根管充填と言います。

この様なケースで、以前と同じように歯根端切除をしても治る可能性は低いです。
何故なら、根の先の膿がたまっている部分が悪いわけではなく、根の中に感染源があるのでそれを除去しなければ治りません。
要は、根の治療をもう一度やり直さないと治らないということです。

でも、この根には、太くて長い土台が入っています。 これを取るときに、ちょっとでもミスがあれば、根を壊すことになり抜歯確定です。 また、逆根管充填材は、見て分かるように根の先端にむかって太くなっているので、そのまま取ることは不可能です。

しかし、マイクロスコープを用いて丁寧に除去を試みればこのように全てきれいに取ることが出来ます。

逆根管充填材はそのまま除去するのは不可能なので、根管内で二つにわって除去しました。

この結果、次のアポイントまでに歯茎からの膿は出なくなりました。

その後、MTAセメントを充填して終了です。

歯根端切除という外科的な手段を用いずにでも、原因である根管内をきれいにすれば治ることが証明されました。

マイクロスコープを用いれば、こんな治療も可能です。
マイクロスコープってすごいですね。