唯一の総義歯(総入れ歯)の患者様

こんにちは、井関です。

ウケデンタルオフィス神谷町本院では、院長がインプラントが得意ということもあり、残念ながら、抜歯にいたった方は、
インプラントになることが多いです。もしくはブリッジになる方がほとんどで、義歯の患者様はほとんどいません。
部分入れ歯の方は数人いらっしゃいますが、総義歯(総入れ歯)つまり歯が一本もない方は一人しかいません。

その一人の方が、昨年数年ぶりにいらっしゃいました。
なんと、御年90歳!近くにお住まいで一人で歩いて来ます。
良く歯が少なくなると、ボケたりアルツハイマーになりやすかったりと言いますが、
(これは科学的に証明されています)この方には一切当てはまりません。
何年も前のことをしっかりと覚えていて、おしゃべりも流暢。
スーパー元気で、ハイカラなおばあさま!
こんな元気な90歳なかなかいませんよ。

少し義歯がゆるくなってきたということと、義歯の歯の部分(人工歯)がすり減ってきて、噛み合わせが低くなっている
ということで、話し合いを致しまして、新たに義歯を作り直すことになりました。

2021年6月のブログにも書きましたが、私はウケデンタルオフィスに来る前はしょっちゅう入れ歯の処置をしていたので、
根管治療も好きですが、義歯の治療も好きなんです。

義歯の治療で難しいのは、下顎の義歯を動かないよう(くっつく)に作ることなんですが、
幸いにもこの患者様は、もともと私が8年前に入れた義歯が調子良くそれほど問題なく使えていました。
今回は下顎の義歯が少しゆるくなってきた程度だったので、下顎はもともとの義歯を少し改造し、
上顎は金属床という義歯を新たに作ることにいたしました。
この金属床というのは、うわあごの部分のみ金属で作ります。
メリットはうわあごの部分を薄く作ることができるので、装着感が良いのと、金属にするので温度を感じることができます。
それと強度が上がります。

写真でみるとこんな感じです。

表側

裏側

 

上下の義歯が入った状態

口元も自然な感じに仕上がりました、本当は上顎の義歯をもう少し前に張り出すことで、上唇の上の部分の僅かなシワも
なくしたかったのですが、90歳という年齢も考えると、全くシワもないというのも変ですし、患者様もこれが良い!って
言っていただけたので、このように仕上げることになりました。
また、この患者様のお孫さんが、実は歯医者さんなのです。(口腔外科医なので義歯はやらないとのこと)
なので、同業者に見られるというプレッシャーの中でやっているようなものでした。
お孫さんにも「おばあちゃん、若くなった!すごい上手な入れ歯だよ!」といっていただけたそうです。
ほんと一安心です。
ご本人に顔出しOKをおいただきましたので、写真を上げさせていただきますが、
年齢を考えるともう少し暗い色の歯の方が普通は合います。
でも、とても元気な方なので、これくらいの歯の色の方が私的には合っていると思いますし、より元気な感じになると思い
あえて少し白い歯を選択しました。良かったのではないかなと思っています。

義歯を入れてから、3ヶ月後経過観察で来院していただきました。
もう何でも食べられる!
とんかつも食べられるし、りんごも食べられる、パンも噛み切れる!
と仰っていただき、こちらも大変嬉しかったです。
総義歯の方で、なかなか前歯でりんごをかじるのは難しいものなのです。それなのにりんごまで噛めるとは。
パンも、咬めても噛み切れるというのはなかなか難しいのです、本当にビックリです!

被せ物もそうですが、入れ歯も使っていれば必ず僅かなズレが出てくるので、
チェックして噛み合わせを少しずつ調整をする必要があります。

ですので、噛み合わせのチェックをしたところ、僅かに一箇所調整したい部位がありました。
調整しようとしたところ、患者様からのまさかの一言!

「触らないでちょうだい!」

え?

「私の入れ歯史上、今が最高に噛めるの!触ったら咬めなくなるかもしれないから、触らないでちょうだい!」

こちらもプロですから、絶対にそんなことにはならないように調整できるわけですが、患者様の気持ちを尊重しました。
それ以上に、そこまで今回の義歯を気に入っていただけたことに心底嬉しく思います。
こういう仕事ができた時、歯科医師になってよかったなって思う瞬間ですね。

昨日、チェックでまた来院していただき、少しだけ調整させていただきました。
91歳になっても変わらずお元気で、入れ歯も調子が良いそうです。
記念に写真を撮らさせていただきました。