フェネストレーション

こんにちは、井関です。

根の治療はきちんとやれば100%ではないですが、結構な確率で治ると思います。しかし残念ながら根の治療だけではまず100%治らないという症例があります。

それが「フェネストレーション」というものです。

これは、何かというと、本来、歯というのは、歯茎より下の根の部分は骨の中に埋まっていますが、たまに根の先端が骨の中に入ってない場合があります。

要は、根の先端が骨から飛び出てるということです。

それが何が問題かというと、神経を抜いてない歯であればほとんど問題無いことが多いのですが、一度神経を抜くとほぼ治らない状態になるのです。 根の先端が骨から出てるって、そんなことあるの?という声が聞こえてきそうですが、

上顎犬歯では、29,1%、

上顎第一小臼歯では、13,5%

というデータがあります。

割と高い数値だと思いませんか?

先ほども言いましたように、フェネストレーションは残念ながら根の治療だけでは100%に近く治らないのです。しかも、レントゲンではフェネストレーションはほぼわかりません。また、根の病気を判断する根の先端に出来たりする黒い影も見ることが出来ません。

そして、何回(何件の歯科医院で)も治療を受けているのに一向に症状が改善しないというやっかいなものなのです。結論から言うと、フェネストレーションは根の治療を何回やっても治りません。

前回と同様に「歯根端切除術」をしないとまず治りません。歯根端切除術をして骨から出ている根の先端を取ってしまえば治ります。

では症状を見てみましょう

白丸で囲んでる付近に症状があり、ひどい時には目の付近まで腫れ上がってる感じがしたそうですが、口腔内には目立った症状はありません。

ちなみに今まで、この歯で3回も治療をしていました。しかし、症状は一向に改善していませんでした。


白丸で囲んだ部分が原因であるにも関わらず、レントゲンでは異常をきたす所見はありません。


CTで見たときも悪い黒い影は見当たりません。黄色の矢印は骨です。しかし、赤の矢印の部分の根の先端は骨から少し出てるような感じがします。

これだけでは、確定的な診断は出来ませんが、「フェネストレーション」の疑いはかなり高いです。

治療前

まずは以前に詰めてある根管充填剤を全て除去し徹底的に根管内をきれいにしMTAセメントで埋めなおします。


歯根端切除術後です。

根の先端が短くなっているのが分かると思います。

歯茎を開いた状態です。

わずか(およそ3ミリ)ですが、骨から根の先端が出ています。たったこれだけが骨の中に納まっていないだけで治らないのです。

根の先端を3ミリほど切った状態です。この後しばらくして症状は全くなくなりました。


フェネストレーションは何回治療しても症状が一向に改善されず、
顔の上半分くらい(目の下くらいまで)がボワーっと晴れてるような感じが続いたりします。

確定診断は歯茎を開けてみないと出来ませんが、CTがあれば今回の患者様のように早々に原因を特定できます。

いやー、CTってほんとにすごいですね。

歯根端切除術

皆さん、こんにちは井関です。

今回は久しぶりに精密根管治療についてお話ししたいと思います。

当院では、根管治療でお困りになった患者様がたくさんいらっしゃいます。 前医で、「もう抜歯しかない」「これ以上の根管治療は出来ない」等、 言われていらっしゃる方がほとんどです。

しかし、ほとんどのケースにおいて、きちんと根管治療を行えば抜歯したり、 外科的なことをしなくても治ります。

そもそも根の先の黒い影(膿、肉芽、嚢胞)というものは、根の中にいる細菌が原因なのです。 根の先の黒い影は、根の中の細菌が悪さをした結果として現れてるだけで、根の先に原因が あるわけではないのです。 なので、根の中を徹底的にきれいにして、根の中の細菌を除去してしまえば、根の先の 黒い影は身体が勝手に治してくれるのです。

しかし、年に数ケース、どんなに根の中をきれいにして細菌を除去しても治らないことが あります。

何故でしょう?

それは、根の中にいた細菌が、根の先から出て根の外側に張り付き自分らの繁殖場所を 作ってしまうからなのです。(それだけが原因ではありませんが、それを話すと長くなって しまうので、またの機会で)

こうなると原因は、根の中だけではなく根の外側にもなってしまうのです。

当然、根の中をいくら治療しても治らないので、根の外側の原因になっている細菌を 取り除かなければなりません。

どういうかというと、外科的に根の先を切除するのです。

これを歯根端切除術と言います。

最初のレントゲンで、抜歯しかないという歯科医もいるかもしれません。
また、最初から(根管治療をせずに)歯根端切除術をすると言う歯科医もいると思います。
しかし、根の中と根の外に原因があるので、両方を治療しないとこのケースでは治らないのです。
きちんとした手順を踏んで、マイクロスコープを使用して、MTAセメントを用いることでこの様な良い結果を得られました。
いやー、マイクロスコープとMTAセメントってほんとに凄いですね。

ラバーダム防湿 生誕150周年

今回の話は、ラバーダム防湿のお話です。

ラバーダム防湿とは、ホームページを見ていただけるとお分かりになると思いますが、
根管治療において歯にラバーダムというゴムのシートをかけて、根管内に唾液が入らないようにする方法です。

唾液の中にはたくさんの細菌がいるので、唾液が根管内に入ると根管治療の成功率が下がってしまうのです。

根管治療において、ラバーダム防湿を行うことは私にとっては、最低限のルールというかマナーであると思っています。

例えば、料理人が、料理をする前に手を洗うことは当たり前、外科医が手術をする時にグローブをすることは当たり前な事と同じだと思っています。

今日、ラバーダム防湿は根管治療において行われていることが多いですが、
実はもともと歯に何かを詰めるときに歯に唾液が付かないようにする為に考えられた手法なのです。

唾液がつくと詰め物がくっつきづらくなるからです。
このことは実は多くの歯医者の先生でも知っていません。

ラバーダム防湿は歴史は古く、ニューヨークのBarnumという先生が、1864年に考案しました。
1864年って日本で言ったら、江戸時代ですよ!池田屋事件が起きた年ですよ!

そう今年でなんとちょうど150周年なのです。
それから、ちょっとずつマイナーチェンジをして現在の形になりました。

現在は、この5つがあればラバーダム防湿をすることが可能です。

【左上】ラバーダムクランプ/【右上】ラバーダムシート/【左下】ラバーダムパンチ/【下中央】フォーセップス/【右下(4つ)】ラバーダムクランプ
日本ではなかなか見ないラバーダム防湿ですが、アメリカでは、根管治療の専門医では90%以上行っています。


しかし、日本では日本歯内療法学会という根管治療の専門の学会の会員ですらラバーダム防湿を必ず行うという先生は5%程度しかいません。
これでは、日本の根管治療の先は見えません、非常に残念です。

先ほども言ったように根管治療にあたりラバーダム防湿を行うことは、ルールであり、マナーでもあると私は思っています。

更にラバーダム防湿を行うと、唾液が入らないようにするだけではなく、術者である私の視野が広くなり治療が本当にやりやすくなります。
今や、私にとってはラバーダム防湿は無くてはならない方法です。

最近思うことですが、先人たちが考えて今でも使われている物っていうのは、必ず何か良いという理由があるものだと実感しています。
マイクロスコープの様な最新の技術も勿論必要ですが、ベーシックも大切だと思います。
温故知新ですね。

マイクロスコープの可能性 – 逆根管充填材の除去

皆様、こんにちは。
井関です。 今回は久々に精密根管治療の症例の紹介です。

こちらのレントゲンの患者様は、根の治療を終えた後再発して、
2度も歯根端切除という根の先端を切る外科的な処置をしたそうです。

しかし、またもや再発して来院されました。歯茎からは毎日膿が出ていました。


黒矢印の根の先の黒い部分は膿がたまっている部分です。
赤矢印は歯根端切除後、根の先端の方を何らかの材料で埋めている部分です。
これを逆根管充填と言います。

この様なケースで、以前と同じように歯根端切除をしても治る可能性は低いです。
何故なら、根の先の膿がたまっている部分が悪いわけではなく、根の中に感染源があるのでそれを除去しなければ治りません。
要は、根の治療をもう一度やり直さないと治らないということです。

でも、この根には、太くて長い土台が入っています。 これを取るときに、ちょっとでもミスがあれば、根を壊すことになり抜歯確定です。 また、逆根管充填材は、見て分かるように根の先端にむかって太くなっているので、そのまま取ることは不可能です。

しかし、マイクロスコープを用いて丁寧に除去を試みればこのように全てきれいに取ることが出来ます。

逆根管充填材はそのまま除去するのは不可能なので、根管内で二つにわって除去しました。

この結果、次のアポイントまでに歯茎からの膿は出なくなりました。

その後、MTAセメントを充填して終了です。

歯根端切除という外科的な手段を用いずにでも、原因である根管内をきれいにすれば治ることが証明されました。

マイクロスコープを用いれば、こんな治療も可能です。
マイクロスコープってすごいですね。

マイクロスコープの可能性 – 精密根管治療

皆様、こんにちは。井関と申します。
今回初めてブログに掲載させていただきます。

私は普段の治療の中で、半分以上が根管治療をしているのですが、 裸眼で根管治療をすると、根の中は見ることがほとんど出来ないので、 術者の経験と勘に頼ることが多いですが、 ウケデンタルオフィスでは、マイクロスコープを使って根管治療をするので 根の奥の奥の方まで見ることが出来ます。

今回は、マイクロスコープを用いることで可能になった治療の一例を挙げさせていただきます。

このレントゲンは、根管内で破折した器具を取り除いたもので、 マイクロスコープを用いなければ、まず不可能な治療です。

しかし、マイクロスコープを用いれば、かなりの確率で破折した器具を取り除くことが出来ます。 根の先の方の白い色が濃くなっているのが破折した器具です。 取り除いた瞬間は、とても気持ちよく、 「I did it!!」 と大声で叫びたくなりますが、 さすがに診療中なので、心の中で叫びます。

そして、マスクの下では満面の笑みです。 いやー、マイクロスコープって本当にすごいですね。