子供を産むとカルシウムを取られて歯がボロボロになる?

明けましておめでとうございます。井関です。

今回はいまだにささやかれている歯に関する迷信について書こうと思います。 先日、古くからの友人の女性に久しぶりに会いました。 すると、マタニティーマークを付けているではないですか。

「おめでとう、良かったね。」と声をかけると、

「ありがとう。そういえば、結婚して引っ越してから歯医者に行ってないから心配なんだよね。だって、子供産むと歯がボロボロになっちゃうでしょ?」

「それは迷信だよ。そんなことないよ。」

「でも、子供にカルシウムを取られて歯がボロボロになるって言われてるよね?」

彼女は、わりと歯に関心を持っている人だし、歯磨きもしっかりできる人です。 でも、いまだにそんな迷信を信じているのか?と思いました。 また、同様の話を歯科関係者で無い人に聞いてみると、 「え?そうじゃないの?」 と半数以上の人が答えてました。

じゃあ、実際はどうなのかいうと半分正解で、半分は間違いです。

東京医科歯科大学の植野正之准教授らのグループは、昨年こんな疫学調査の結果を発表しました。 1990年に秋田県に住んでいた40~59歳の男女に歯科に関するアンケート調査をし、2005年に歯科検診を受けた約1200人(男性562人、女性649人)の結果を解析し、女性は出産回数を「0回」から「4回以上」まで5グループに分けて、親知らずを除く28本の永久歯のうち残っている数を比べました。 すると、4回以上出産しているグループの残っている歯は約15本。出産が0回の約18本や1回の約19本に比べて約3本少なかった。回数が多くなると残っている歯の数が減っていたのです。男性では子供の数別に比べたが、残っている歯の数と関連はなかった。

結論は、「出産回数が増えると将来、歯を失いやすくなる」

しかし、これは子供にカルシウムを奪われて歯がボロボロになって歯を失ったわけではありません。口の中で出来上がっている歯からカルシウムが溶けて子供の栄養になることは絶対に無いのです。

では、何故そうなるのでしょう?

原因として考えられるのは、

①つわりによって歯磨きがおろそかになる

②酸性のものを欲して、食べることにより口の中が酸性になる

③ホルモンの分泌量の増加により特定の細菌が口の中に増えて妊娠性歯肉炎になる(妊婦さんの半数以上がなると言われている)

④妊娠、授乳中に歯科医院にかかるのが難しかったり、歯科治療が出来なかったりと思い込み、治療しなければいけなかったり、治療途中の歯が放置される

⑤出産直後は授乳のために、なかなか寝られなかったりして、歯磨きがいつもの通り出きずおろそかになる

⑥優先順位が子供が1番で、自分の事が後回しになってしまう

決して、子供にカルシウムを取られて歯がボロボロになるわけではありません。 これらの事が色々重なって、歯が悪くなることが多いんですね。 なので、妊娠が分かったら早めにご相談ください。 安定期(妊娠5~8ヶ月)であれば心配することなく治療ができますので。