長くて太い土台は取れないのか?

明けましておめでとうございます、井関です。
本年も宜しくお願い致します。

今回の話をする前に、
先日、ホームページを作製していただいてる会社から
このブログはひと月に何人の方に見ていただいているか、知ってますか?
と言われました。

正直、あまりそういうことを考えないで今まで書いてきましたが、言われると確かに気になるは気になります。

多い時でひと月に600人弱の方が閲覧しているらしいです。

私としてはそんなに多くの方に読んでいただいているとは思っていませんでした。

たまに読んでますよとか、このブログを見て来院しました、という方もいらっしゃって、そういう時は非常に嬉しいです、励みになります、感謝感謝です。
ということで本年も引き続き頑張って書いていこうと思います。


さて、今回は久しぶりに根管治療の話をします。

私が歯科医になりたての時からたびたびこの様な話を患者様から聞きました。

「この歯には、長くて太い金属の土台が入っていて、この金属の土台を取ろうとすると歯が割れてしまうので、治療ができません。なので抜歯です。」
と他の歯医者さんで言われた、と。

確かに長くて太い金属の土台を除去するのは難しい治療と思います。
ほんの少しでも操作を間違えれば、歯を割ってしまったり歯の根に穴を開けてしまったりします。
しかし、自慢では無いですが、いや自慢ですが(笑)、私は歯科医になってから一度も
長くて太い土台であっても除去できなかったり、歯を割ってしまったことはありません。

では、どの様に治療を行ったかというと、
地味ーに少しずつ少しずつ金属の土台を削って、少しでも心配ならレントゲンを撮ってと手間暇惜しまずかけて除去したのです。

この方法は物凄く時間がかかりますし、物凄く根気が必要です。
歯の治療はどんな治療でも基本的にきちんとやろうとすればするほど時間はかかるし根気が必要なものです。
しかし、やはり治療は速く出来るのなら速い方が良いですよね?

そこで、あるテクニックが最近世間(歯科界というか根管治療の世界で)を席巻していますので、是非ご覧頂きたく思います。

それは「ダブルドライバーテクニック」と言われています。
大阪の根管治療の専門の先生がこの方法を発明しまして、以下の写真の様にマイナスドライバーを2本使ってテコの原理を用い金属の土台を除去します。
このダブルドライバーテクニックでこの先生は脚光を浴びました。
画期的なテクニックをと言えると思います!

80%以上この方法で金属の土台は除去することが可能です。
先ほども言いましたが、この方法はここ数年で根管治療の世界で脚光を浴びているのですが、実は私はもっと前から行っていました。 何故か?

実は院長(宇毛先生)が10年以上も前からこの方法で金属の土台を除去していたのです。それを私は教わっていたからです。本当にこのテクニックは凄いです。院長も凄いと思います。
歯を全く削らず、しかも短時間で出来るのです。症例にもよりますが、だいたい数分でできます。以前の様に地味ーに削っていく方法だと20分以上かかったものです。

この様なテクニックというのは、なかなか本に載っていたり講習会で教わったりしません。発想で生まれるものです。
発想というのは、知識と経験から生まれるものだと私の最初の師匠が口酸っぱく言っていました。まさにこの方法は知識と経験から生まれた物だと思います。
経験は長く歯科医をやっていれば積まれるものですが、知識はその都度アップデートしていかなければ積まれるものではありません。

現状に満足することなく、常に知識をアップデートし上を目指し、今年も研鑽を積んでいきたいとスタッフ一同思っておりますので、本年もよろしくお願い致します。

特殊な根管 続

こんにちは、井関です。

今回は、前回に引き続き非常に珍しい症例を紹介させていただきます。

前回紹介した歯は上顎大臼歯ですが、下顎の大臼歯も根管治療をよく行います。
上顎の大臼歯の第一大臼歯と第二大臼歯はかなり似ている形をしています。
第三大臼歯(親知らず)は様々な形をしています。
下顎の大臼歯も、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯(親知らず)とありますが、上顎に比べ、各歯牙で形が違います。

似ているようで似てないんですね。
よって、根の形や数、根管の数も違ってきます。

今回は下顎第一大臼歯に絞ってお話しさせていただくのですが、下顎第一大臼歯は下の図のように2根で3根管であることが多いです。

しかし、たまに3根4根管のことがあります。

下顎第一大臼歯の根管

青矢印の先の黒い部分が根管です

先日、学会にいきましてその報告によると、欧米人はほとんど2根3根管で、3根4根管はアジア人に多いらしいです。

日本人では3根4根管は約28%と4歯に1歯なわけなので、そう珍しくはありません。

しかし、先日50代の男性の下顎第一大臼歯で非常に珍しい形態に遭遇しました。

術前のCTで3根であることはわかっていましたが、赤矢印の根の形がちょっと楕円形を呈していました。

非常に珍しい形態をもつ下顎第一大臼歯

ん?なんか通常の形とは違うなと思いながら、根管治療をしていると、
やっぱりおかしい。

マイクロスコープで見ていると遠心頬側根に根管が2つ(黄色矢印)あることが判明しました。

初めて見ました。多くの歯科医師がもしかしたら一生出会う事がないくらい、珍しい形態です。

CTとマイクロスコープがなければ、きっと治療を成功に結びつけることは出来なかったと思います。
改めて、CTとマイクロスコープの凄さというか、有り難みを感じました。

珍しい根管治療症例

特殊な根管「MB3」

こんにちは、井関です。
今回は非常に珍しい症例を報告させていただきます。

当院において上顎第一大臼歯、第二大臼歯の根管治療は非常に多く、毎日の様にこれらの歯の治療を行っています。
なぜ、これらの歯の治療が多いかと言いますと、一つの特徴があるからなのです。
上顎大臼歯は通常、近心頬側根、遠心頬側根、口蓋根という3つの根があります。
そして、一つの根に対し根管は1つであることがほとんどなのですが、
唯一、3つの根の中で近心頬側根では、一つの根に対し2つの根管があることが多いのです。

一つを近心頬側根管(MesioBuccal root canal)通称MB、もう一つを近心舌側根管(MesioLingual root canal)通称ML、もしくはMB2と言います。
どちらかというとMB2と言われることが多いので、この後もMB2と表記させていただきます。

で、MBはマイクロスコープを用いなくても簡単に見つかるのですが、MB2が問題なのです。
このMB2見つかるときは、裸眼でも簡単に見つかるのですが、見つからないときは、マイクロスコープを用いても見つけることが非常に困難なことが多いのです。
なので、マイクロスコープを使わないで治療をされている医院では見落とされてしまうことが多いのです。

そうなると、見落とされたMB2は治療されないわけです。
当然そこに感染があると治らない。
しかし、見つけることは困難。(マイクロスコープを使っても)

そこで登場するのがCTです。

ここで知っている人は知っている一つの法則があります。
これを知っているとMB2が簡単に見つかるのです。
企業秘密ですが、発表しちゃいましょう!(笑)

根の中に根管があるわけですが、根の中に一つの根管しか無い時は必ず根管は根の中心にあるのです。もし、一つの根管が根の中心にないときは、ほぼ100%もう一つ根管があるのです。

左のCTを見て下さい。

隠れた根管

治療されてる根管が赤矢印の方にあることがわかると思います。
しかし、根の中心に無いですよね?中心より右側に寄っていることがわかると思います。右のCT(断面図)でもわかると思います。
こういう時は、必ず左側の方にもう一つ根管(MB2)があるのです。
何となく黒い筋(黄色矢印)があるのが分かると思います、これがMB2です。

しかし、先日いままでに見たことの無い症例に出会いました。これです。

珍しい根管MB3の断面図

MB3発見!!!

珍しい根管MB3

つまり一つの根に3つの根管があったのです。
長いこと歯科医をやってますが、初めて見ました。
講演会や本でMB3があるということは知っていましたが、出会うことができるとは。ビックリと共にちょっと興奮しました。

おそらくCTだけでも、マイクロスコープだけでも、どちらか一方しか持ってなければ発見出来なかったと思います。
両方が揃ったことによって、発見出来た症例だと思います。

あらためて、CT、マイクロスコープの凄さを実感しました。

根管充填材(バイオセラミックとは?)

こんにちは、井関です。
今回はかなりマニアックではあるのですが、根管充填材の話をしたいと思います。

根管治療がなされて、痛みや歯ぐきの腫れがなくなって、
もう問題が無いなとなったら、最後に「薬をつめますね」と言って何かを詰めるのですが、 一体何を詰めていると思いますか?

は?薬を詰めると言ってるんだから、薬じゃないの?
と、思われるでしょう。

通常、根管治療において詰める薬と言ってるものは、正確には薬ではありません。
ガッタパーチャと言われる熱帯の木から産生される樹脂を詰めているのです。

ガッタパーチャは1845年に海底ケーブルに使われたり、ゴルフが好きな方はご存知かもしれませんが、ゴルフボールに使われて、ゴルフボールが安価になりゴルフが広まったとも言われています。
歯科では、1847年に使われ始めたという歴史があり、1887年に製造を開始し始ました。

現在、成分はこのようになっています。
ガッタパーチャの成分

ガッタパーチャは20%くらいしか使われてないんですね。
大部分を占めるのは酸化亜鉛というものなのですが、通称ガッタパーチャと呼ばれています。

ガッタパーチャ

こんな風にピンク色をしています。
もう少しオレンジっぽい色をしているものもあります。
そして棒状というか針状の形態をしていて、これを根管の太さに合わせて何本も根管の中に詰めていくのです。

先ほども言いましたように、ガッタパーチャは1847年に歯科で使われ始めたので、今年でなんと!170年!
非常に歴史があるものなのです。
なので、たいていはガッタパーチャを詰めれば治るのですが、どうしてもガッタパーチャを詰めるだけでは治らないというケースもあります。

少し前までは、そこで抜歯となったわけですが、ここでブログでも何度も出ているMTAセメントの登場により治せないケースが治るようになりました。
MTAセメントはガッタパーチャと違い、殺菌作用、硬組織誘導能等という薬効があります。それ故に治るのです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
MTAセメントについての詳細はこちら

mtaの種類

現在、MTAセメントはこのようにたくさんの種類があります。
当院で使用しているのは左上の赤丸で囲っている、「Pro root MTAセメント」です。
Pro root MTAセメントは世界で最初に作られたMTAセメントで、他のMTAセメントはこのPro root MTAセメントの後発材料です。

そして最近はバイオセラミックと呼ばれる材料が出てきました。

稀ではありますが、当院へ
「そちらではバイオセラミックを使ってますか?」という問い合わせがあります。
「使ってますよ、MTAセメントという物を」というと、
「いや、MTAセメントではなくてバイオセラミックを使ってますか?」と言うのです。

で、このブログを読んだ方には覚えていただきたいのですが、
Pro root MTAセメントの後発材料で特に米国のBrasselar社が販売している製品をバイオセラミックと呼ぶことが多い為、Pro root MTAセメントとバイオセラミックは違うものと勘違いされやすいのです。
正確にはバイオセラミックの中にPro root MTAセメントも含まれます

では、バイオセラミックとは何なのでしょう?
簡単に言えば、生体に用いられる非金属無機材料です。

「人間は金属や合成高分子材料で構成されていない為、これらの材料が体内に入ると瘢痕組織を形成し、拒絶反応を起こします。 でも骨は拒絶反応を起こしません。
骨はカルシウム水和物、リン酸成分及びハイドロキシアパタイトが含まれます。
したがって、生体に入れる材料がハイドロキシアパタイトの層を体内で形成することができれば拒絶反応を起こさずに済む」
という仮説を立てて、1960年代後半から研究が始まりました。

そして現在、バイオセラミックは歯科だけではなく、医科の様々な分野で使用されています。 むしろ、医科の世界の方がはるかに進んでいます。

例えば、人工骨、人工関節、人工臓器などに使われています。
また、ガン治療用材料としても使われています。

では、Pro root MTAセメントより後発材料の方が良いのでは?と思われるでしょうが、 まだ、研究段階や、エビデンスが集まっていない物が沢山あります。

Pro root MTAセメントはたくさんのエビデンスがあり、もっとも世界中で持ちいられてるバイオセラミックなのです。

正直、新しく出てきているバイオセラミック材料を使ってみたいとは思いますが、
やはり論文や実績(エビデンスレベル)がたくさん出てこないと信頼できないので、
まだ使用するには尻込みしている状況です。

医学は日進月歩です。
何年かしたら、全く違う材料が出てきてそれを使っているかもしれません。
しかし、現在において、いまだ論文数、エビデンスレベルでPro root MTAセメントを超えるバイオセラミック材料はありません。

当院では、根管治療だけでなく、全ての治療においてエビデンスレベルで正しいと思われる最新の治療を歯科医師、衛生士も含めて当院を訪れて下さっている方々に提供できるよう日々研鑽しております。

MTAセメントについての詳細はこちら

OKマイクロエキスカを用いた再根管治療(その2)

明けましておめでとうございます、井関です。

今回は前回の続きで、根の外に飛び出てしまったガッタパーチャをOKマイクロエキスカを用いることによって、除去することが出来た症例をお見せします。

前回のように根の中から外に飛び出していても、繋がっていればまだ少しは除去しやすいのですが、(そうは言ってもなかなか難しいです)繋がっていなくて完全に飛び出てしまった状態は非常に難しいです。
レントゲンでみると簡単そうに見えますが、実際はマイクロスコープで根の中を覗き、根の外まで見ないといけないのです。根の外に向かって空いてる穴の大きさはおよそ直径1ミリです。
1ミリの穴の中でOKマイクロエキスカを動かすって想像つきますか?
そうとうエグいです。

そして、根の外はどうなっているかというと肉芽と言われるブヨブヨの血にまみれたお肉になっているのです。この肉芽を除去したり掻き分けてガッタパーチャを見つけるのです。
しかし、この肉芽はちょっと触るとすぐ出血して、マイクロスコープで見てる範囲は血の海になってしまいます。なので、出血したら止血してまたそーっと触ってガッタパーチャを探すを繰り返すのです、えらい大変です。
ようやくガッタパーチャを見つけてもこれにOKマイクロエキスカ引っ掛けるのもまた困難なのです。

OKマイクロエキスカ症例2

どうですか?見事に除去できましたね。
非常に嬉しかったです、患者様も喜んでました、良かったです。
この治療は絶対にマイクロスコープとOKマイクロエキスカがなければできない治療です。
数年前にはこんなことは出来ませんでした。
日々の積み重ねで出来るようになったと思います。
少しでも多くの歯を残せるように今年も研鑽を積んで参りたいと思います。

それでは、今年一年もウケデンタルオフィスを宜しくお願い致します。

OKマイクロエキスカを用いた再根管治療

こんにちは、井関です。

根管治療のやり直しの治療のことを、感染根管治療と言います。
では、感染とはなんでしょう?
それは細菌がいるということです=細菌感染
本来、根管内には細菌が全くいません。それが何かしらの理由で細菌が根管内に侵入し、住み着いて増殖していきます。 その細菌が原因で、痛みが出たり、疼いたり、噛んで違和感があったり、歯ぐきが腫れたり膿が出たりします。 なので感染根管治療は根管内から感染(細菌)を取り除く治療というわけです。

では、どうやって細菌を取り除くかということですが、方法は2つです。 一つは、薬剤を用いて細菌を死滅させます。 もう一つは、機械的に細菌を除去します。 薬剤を用いる方法については、また別の機会にお話しします。 今回は機械的に細菌を除去する方法についてお話をしていきたいと思います。

では、機械的な細菌の除去とはどういうことでしょう? 感染根管治療とは先ほど申しました様にやり直しの治療なので、すでに一度治療されているわけです。そうなると、根管内にはガッタパーチャと言われる樹脂で根管充填されています。よく薬を詰めますねー、と言われて詰めるものです。

もともとガッタパーチャには当然のことながら細菌はいません。 しかし、根管内が細菌感染を起こすと、このガッタパーチャに細菌が付着してしまうのです。なので、ガッタパーチャをすべて根管内から除去しないと細菌の除去はできません。 ですが、ガッタパーチャを除去するというのは口で言うほど簡単ではありません。 通常用いられてる器具を使って(マイクロスコープを用いないで)、レントゲンで全てガッタパーチャを取り切れたと確認したとしても、 なんと!根管内の壁には70%もガッタパーチャは残っていて(レントゲンには写ってこないわずかなガッタパーチャが存在するということです)、

マイクロスコープを用いて根管内を見ながらガッタパーチャを除去しても10%位は根管の壁に取り残しがあるという報告があります。 しかし、私が先月講習を受けた岡口先生と柿沼先生が開発したOKマイクロエキスカという器具を用いれば、根管内をくまなく触ることが出来てガッタパーチャの取り残しが格段に少なくなるのです。 またOKマイクロエキスカは先端が非常に細く出来ているので、根管の外に飛び出してしまったガッタパーチャも引っ掛けて除去することが出来るすごいものです。

申し訳ないのですが、もしこのブログを携帯で見てる方がいらしたら、多分上の写真の違いは分からないと思います。パソコンで見ても大きな画面ではないと0.2ミリと0.3ミリの違いは分からないと思います。裸眼では全くこの2種類の違いは分かりません。

しかし、根管内をマイクロスコープで覗きながらこの二つを使うと0.3ミリと0.2ミリの差はとんでもない差なのです。なにせ数字だけ見れば1、5倍違うのですからね。 0.3ミリで除去することが困難だったガッタパーチャが、0.2ミリで除去を試みると非常に簡単に除去できる様になりました。

実は、0.3ミリのOKマイクロエキスカは普通に手に入るのですが、0.2ミリの方はまだ販売されていないのです。先月の岡口先生の講習会に参加した人に特別販売してくれた物なのです。なので先月の講習会に参加した人くらいしか手に入れることは不可能なはずです。多分日本で数十人しかまだ持ってないと思います。 余談ではありますが、なんとこの器具は私も知らなかったのですが、職人さんが一つ一つ手作業で作っているそうです。すごい技術ですね。

そして、これを用いるとこういうことが出来ます。
黒い線で描かれている部分が根の外形です。 赤矢印の部分が根から出てしまったガッタパーチャです。 きれいに除去できていることが分かると思います。 素晴らしい器具を入手できました。

講習会受けてきました

今日は、井関です。

先月はひと月の間に5回も勉強会やら講演会に行ってきました。 最後は先週の土日二日間、SJCDという日本で最大のスタディ―グループで開催されているマイクロエンドアドバンスコースを受講してきました。 3年前に、院長と共にマイクロエンドレギュラーコースを受講していたのですが、今回はそれのアドバンスコースです。 さすがにアドバンスコースは内容が素晴らしく、勉強になりました。

コースで教えていただいた先生は、岡口先生と言いまして、日本でも指折りの根管治療の名医です。大変に尊敬している先生です。 せっかくコースを受けているのだから、自分のケースを岡口先生に見ていただいたところ、なんと!岡口先生から 「明日、ランチョンセミナーやってよ」 と言われてしまいました。もうビックリです。 受講生の身分で、岡口先生、インストラクターの先生、受講生の先生の前で発表をさせていただきました。 大変緊張しましたが、貴重な経験をさせていただいたと思います。 また、岡口先生から、たくさんのお褒めの言葉をいただきましたし、こういう時はこういう風に治療すると上手くいくよなどと、本には載っていないテクニックもたくさん教わることが出来ました。今後の治療に深みが出ること間違いなしです。 いやー、勉強になりました。

尊敬する岡口先生と写真を撮らせていただきました。 サティフィケートも頂きました。

神経を抜いた歯が痛いのは何故?

こんにちは、井関です。
今回は、少し基本的なことについて書いていこうかと思います。
たまに患者様に、
「なんで、神経抜いてる歯が痛いんですか?まだ神経が残ってるんですか?」
言われることがあります。
虫歯のイメージが強いせいか、歯が痛い=歯の神経が痛いと考えると思います。
しかし、神経を抜いてる歯が痛いというのは、痛い場所が違うのです。

歯は、骨(歯槽骨)の中に埋まっているわけですが、ダイレクトに骨とくっついているわけではありません。上図の様に歯と骨の間には歯根膜腔という0.2~0.3ミリの隙間があります。レントゲンで見ると、歯の周りを取り囲んでる黒い線がそうです。
その歯根膜腔には歯根膜という線維が走っていて、これが歯と骨をつないでます。
歯は骨の中で歯根膜線維によってハンモックのように吊るされているわけです。
そしてこの歯根膜線維は伸び縮みします。
試しに、上の前歯を指で前後に揺らしてみてください。わずかに歯が動くことがわかると思います。これは、歯がこの歯根膜腔の中で動いているのです。

で、神経抜いてる歯が痛い場所は、この歯根膜なのです。
もちろんここにも神経はありますので、ここに炎症が起きるから痛いのです。つまり歯の外側が痛いのです。

これを歯根膜炎とか根尖性歯周炎と言います。
厳密にいうと、根尖性歯周炎の中に歯根膜炎は含まれます。
根尖性歯周炎は歯根膜だけでなく、その先の骨(歯槽骨)の炎症まで含まれて使われる言葉です。

歯根膜炎、根尖性歯周炎の原因は、
1、外傷(歯をぶつけたりした時)
2、歯周病
3、咬合性外傷(咬み合わせの問題で起こる外傷)
4、根管治療が不良
等があげられます。
原因によって治療方法は違います。

根管治療が不良で何故、歯根膜炎、根尖性歯周炎になるかというと、
根の中に細菌が残っていて、その細菌が根の外に出て、歯根膜や歯槽骨に炎症を起こすのです。だから痛いのです。
決して、歯根膜や歯槽骨の炎症起こしてる場所が本来の悪い所ではないのです。
本当に悪い所は細菌を生み出してる根の中なのです。
なので根管治療を行って、根の中の細菌を退治すれば治ります。

典型的な症状としては、咬むと痛い、指で押すと違和感を感じる、何もしてない時でもズーンと重い感じがする、疲れた時や体調が悪い時に症状が悪化するなどです。
こんな症状がある方、是非一度ウケデンタルオフィスにご連絡ください。
スタッフ一同、全力で治療にあたらせて頂きます。

アマルガム除去~MTAセメントリペア

こんにちは、井関です。

今回はちょっと珍しい症例をお見せ致します。

患者様は、左下の一番奥の歯とその前の歯の間に物が詰まる。
そこの歯茎に違和感があるとのことでした。

その二つの歯の間に隙間があったので、当然物は詰まります。
被せ物をやり直して、隙間を無くせば詰まるのは無くなるので話は簡単なのですが、歯茎に違和感、これはなんでだろうとレントゲンを撮るとこんな感じ。

歯の根のわきっぱらに何か詰め物があるではないですか。(赤矢印の先)
なんだこれ?と思ってレントゲンを見ていると、患者様が、これは10数年前にアメリカでアマルガムを詰めてもらったんですよ。
と、おっしゃいました。

歯茎の違和感はこのアマルガムという金属を根のわきっぱらに詰めてあることが原因です。
これをどうやって詰めるかというと、歯の中から詰めているのではないんです。
外科的に歯茎を開いて根の外から詰めて歯茎をもとに戻すという手法を取っているんですね。

アメリカでは10数年前でもこういう治療をするんだなとしげしげとレントゲンを眺めてましたが、じゃあどうやってこれを治そうか?いや、治せるのか?と色々なことを考えました。

少し治療の前にアマルガムについてお話をしたいと思います。

アマルガムというのは、1826年にフランスで使われたのが最初で、銀とスズの合金に銅や亜鉛を添加した粉末を、水銀で練った合金です。ここで、水銀???って思った方もいるでしょう。
日本では水俣病のせいで水銀=危険なもの、有害なものという認識がありますが、アマルガムに使われているのは無機水銀で、水俣病の原因となった有機水銀とは違います。
だから私が学生のころは、アマルガムは安全です。と習いましたし世界中で歯の詰め物として使われていました。

しかし現在、やはり金属アレルギー等の問題で良くないと言われています。
スウェーデン、デンマーク、イギリスでは使用禁止になっています。
アメリカでは現在でも使用されていますが、日本では今年から保険治療の項目から削除されました。
しかしながら、先ほど申しましたように学生時代には習ってるわけで、1970~80年代には日本全国でアマルガムを用いた治療はされているのです。

現在銀歯と言われている保険で使用されている金属は12%金銀パラジウム合金と言われている物で、12%金、20%パラジウム、銀が50%位、銅が16%位、その他亜鉛やガリウム等で出来ています。(細かくは金属メーカーによって違います)
ご存知ない方もいると思いますが、これは日本独自の物なのです。海外ではなかなかお目にかかれないものなのです。
普通に皆さんのお口の中に入っているわけですが、昨今この金属についても金属アレルギーの危険性が示唆されています。
ちなみにお口の中で銀でキラッと光っているのは12%金銀パラジウム合金で、黒っぽい銀はアマルガムです。こんな感じです。


さて、話を元に戻します。これをどうやって治すかということですが、先ほどのレントゲンをもう一度良く見てください。
矢印の先が黒くなっていることがわかります。
これは、根の周りの骨がとけている状態なのです。
やはりアマルガムを除去しないと歯茎の違和感は治らないわけです。

ということで、私が選択した治療法は、根の中からアマルガムを取り、そこにMTAセメントを充填するという方法です。
勿論、根の治療も行います。

これが除去したアマルガムです、約3ミリほどの大きさです。

レントゲンで見ると大きく見えますが、たった3ミリの大きさしかないんです。
勿論、これを除去するのにマイクロスコープの使用は必須です。

最後にセラミックの被せ物をして終了です。当初隣の歯との間にあった隙間もセラミックの被せ物で補正したので物も詰まらなくなりました。
MTAセメントを詰めてからたった1週間で、患者様は歯茎の違和感が全くなくなったと喜んでいました。
骨が溶けている所はこれから徐々に治っていくと思います。
いやー、やっぱりMTAセメントは凄いですね。

歯科検診に行ってきました

今回はいつもの根の治療とちょっと違う話をします。
といっても、根の治療と関係が無いわけではありません。

本日、保育園の歯科検診に行ってきました。
この保育園にはウケデンタルに勤める前から行ってまして、もう10年以上伺わせていただいております。

ここ2,3年感じることは、虫歯のお子さんが非常に少なくなっていることです。
10年前は、歯みがきが全然出来てない子もたくさんいましたし、3歳児で全ての乳歯に虫歯のある子もちらほらいました。
6歳児にもなると、もう銀歯が詰められている子供も結構な数でいたものです。
今回は120人ほど診たのですが、とにかく歯みがきが良くできている。
前歯に小さな虫歯があった子がたった4人、大きな虫歯は0人、銀歯も0人。

10年で随分変わったなーと実感しました。
少子化で、両親に対し子供一人という家庭が多くなって、一人の子供にかける時間が多くなったことが理由なのか、虫歯予防が大切という概念が多くの家庭に浸透していることが理由なのか、その保育園の虫歯予防の徹底なのかは解かりませんが、歯科医師として嬉しい思いです。

で、全国的に見てどうなったかを調べてみました。
これは虫歯保有率です。全体の何パーセントが虫歯になっているかというグラフです。

すると、こんなにも子供の虫歯は減っているんですね。
戦後から、急激に虫歯罹患率は高くなって、1970年代にピークを向かえ、その後はどんどん子供の虫歯の数は減っています。
正直ビックリしました。年齢が高いほど、虫歯は多いものだと思っていたのですが、私の世代がもっとも多いんですね。

更に興味深い資料を見つけました。

なんと、これも私の世代である40歳代が一番多いんですね。
虫歯が多ければ当然そうなるわけですが、年齢が高いほど銀歯も多いと思っていたので更にビックリしました。

私はいつもだいたい根の治療についてブログに書かせていただいていますが、
そもそも根の治療は、ほとんどが虫歯が大きくなって痛みが出て神経を取らなければならないという過程を踏んでいるわけで、虫歯にならなければやらなくて済む治療のわけです。
という事は、今の子供たちが将来根の治療を受ける可能性はどんどん低くなっているのです。羨ましいです。
以前のブログにも書きましたが、根の治療つまり神経を取る治療はその後、歯牙破折の可能性が高まり抜歯になることがあります。
なので、虫歯にならないこと、虫歯を予防することがやはり大切なのです。
ということは、歯みがきを頑張るしかないんですよね。

そして、もう一つ、定期的な検診を受けることが大切なのです。
なので、当院では治療が一通り終わった後も定期検診をお願いしております。