続々 破折器具の除去

こんにちは、井関です。

たまにしかやらない治療や年に数回しか遭遇しない症例というものがあるのですが、 不思議なもので何故か同じ内容の治療が続くことがあります。

もうこのブログでも何度も載せている根の中の折れた器具の除去ですが、 なんとこの1ヶ月で6回も遭遇しました。
続くときは続くんですよね。

一つ目の症例ですが、よーく見ないと分からないくらい細い器具が折れていました。
しかも、真横に折れているのです。
最初は、レントゲンの写りが悪かったのかとか、レントゲンのフィルムに傷でも 付いていたのか、と思っていたのが、根の中をマイクロスコープで覗くと根の中で キラッと光る折れた器具を発見しました。

分かりますか?こんな風に真横になっているのは初めてみました。

アップにしてみるとこんな感じです。

無事除去できました。



もう一つ症例をご紹介させていただきます。

こちらはなかなか見ない太さの器具が折れて、しかも根の先から少し飛び出ていました。
先ほどのレントゲンに比べると折れた器具がすごく太いのがわかるかと思います。

こちらも無事除去できました。

続 折れて飛び出た器具の除去

こんにちは、井関です。

先日、根の外に器具が半分飛び出してしまっている症例に遭遇しました。
以前にもそのような症例はありましたが、今回はちょっと難しいぞと感じました。

まず、根の中で折れた器具が結構長い。

そして隣の歯が歯周病で根の先まで骨が吸収してなくなっているのです。
つまり、この折れた器具の先は骨がなく不良肉芽(ふりょうにくげ)か膿が溜まっている状態なのです。

不良肉芽というのは、悪い歯肉と思ってください。
器具の先に骨がないということは、少しでも押してしまうと、すぐに突き出てしまう状態なのです。
骨があればそこで止まってくれるかもしれませんが。

どうやってこの折れた器具を取るかというと、振動を与えるのです。
そうすると器具が動いて浮き上がってくるのです。
押し出さないように慎重に振動を与えて無事除去に成功しました。


取れた器具がこちらです。約4ミリと結構長めでした。


最後にMTAセメントで充填して終了です。
(後ろの歯は歯周病があまりにも進行してしまったために痛みが 出てしまったのです、残念ながら抜歯になりました。)


たまに同じような症例に遭遇しますが、その患者様方はほとんど 前医で抜歯と診断されたそうです。
残念ながら、マイクロスコープが無ければこの治療はできません。

やはりマイクロスコープの力はすごいです。

根に穴があいてしまったケース

こんにちは、井関です。

今回は歯の根に穴があいてしまって、ずっと疼きがあった症例を治療した話です。
まずレントゲンを見て頂きたいと思います。

赤矢印の先が黒くなっているのが分かるかと思います。
黒い部分は骨が感染して溶けてしまっています。
最初は何が原因か分かりませんでした。

しかし、根管内をマイクロスコープで見ると、本来あいてはいけないところに穴があいてしまっている事が分かりました。
これは、自然にあいてしまっているわけではなく、以前の治療であけてしまっているのです。

決して、前医の批判をするわけではなく、こういった事は無い方が良いに決まっているのですが、ままある事なのです。
何故なら、根管内というのはマイクロスコープがなければ見えず、盲目的に治療するしかなかったのですから。

当院では、必ずマイクロスコープを使用して治療を行なっておりますので、 この様なことは非常に少ないです。

では、あいてしまった穴はどうしましょう?

ひと昔前なら、ほとんどの先生が抜歯という選択肢しかありませんでした。
しかし、現在は私の大好きなMTAセメントがあるわけです。
こういった穴があいてしまったケースでは、MTAセメントが威力を発揮します。

術後1年3ヶ月です。赤矢印の先に黒い影がなくなっているのが分かると思います。
骨が復活してきました。改めて、MTAセメントはすごいなと実感しました。

この様に穴があいてしまっても諦める必要は一切ありません。
もし、穴があいているので抜歯と診断された方がいらしたら、
是非ウケデンタルオフィスにご連絡ください。

0.9%の確率

こんにちは、井関です。

今回は、非常に珍しい症例をお見せしたいと思います。

下の歯の第一大臼歯の前の根は、通常1つの根に2つの根管(1根2根管性)があります。
1つの根管のこともあります。
しかし、この根は1つの根に3つの根管がありました。
日本人ではおよそ0.9%しかないと言われています。
つまり100人に一人いるかどうか、ということです。
私は、この様な症例はかつて一度しか遭遇した事がありません。

初診時、噛むと痛みがあり疼くという状態でした。
なので通常通り2根管を治療していたのですが、一向に症状が改善しませんでした。
治療途中で2つの根管の間にもう一つ根管(赤矢印)がある事が判明し、そこを治療すると いきなり症状が改善しました。

これに関しては、CTでも最初からはわからず、マイクロスコープを用いて治療したから 発見できたことでした。

おそらくマイクロスコープを使わないで治療をしていたら、一生見つける事ができない 根管だったと思います。

診査診断の重要性

こんにちは、井関です。

今回は一つの症例を見て頂きたいと思います。
出来ましたら、3つ前のブログも読んでいただいて比較をしていただくと面白いと思います。
非常に似ている症例なのです。

患者様は左下の奥歯の歯茎に膨らみができて、そこから膿が出てくるという主訴で 来院されました。

下の写真の様に奥から2番目の歯の歯茎に膨らみが出来ています。

レントゲンではこの様な状態でした。
黒矢印の先の白い線は歯茎の膨らみからレントゲンに写る棒状の物を入れています。
それによって膿が出てきている原因がどこにあるか探っています。
そうすると、この歯の後ろの根に向かっていました。

なので、通常通り右下の奥から2番目の歯の治療に移ろうかと思ったのですが、
何かおかしい??????

この歯は銀の詰め物がしてあるが、虫歯になっている感じがしない。

その為、この歯に微量の電気を流し、神経が生きているか死んでいるかの検査を しました。

すると、生きているではないですか!

通常、神経が死んでいる歯、もしくは根管治療している歯にこの様な膨らみが出ます。
生きている歯にはあまり出ることはありません。
(たまに歯周病の時に出ることもありますが、この歯は歯周病にはかかっていませんでした)

じゃあ何故、歯茎に膨らみがあるのでしょう?

そこで、もう一枚レントゲンを撮りました。

すると、一つ後ろの歯の根の先に黒い影があることが分かりました。
(矢印の先です)

あ、これは後ろの歯が原因歯だと私は確信しました。

一体どういうことでしょうか?

これは一番奥の歯の黒い影の膿の溜まっているところから、一つ前の歯の歯茎に膿が 出てきていたのです。
こういうことはたまにあります。

いくつかのきちんとした診査をしないと原因の歯を特定できないこともあるのです。
逆にきちんとした診査をしなかったら、健康ななんでも無い歯の神経を取ってしまう という最悪なことになるかもしれないのです。

そのような事が決して無い様に、当院では診査診断に時間をかけ、その内容を患者様に きちんと説明してから治療に入る様にしております。

治療前後の比較になります。
黒矢印の先の膨らみがなくなっている事がわかります。
根管治療後、セラミックの被せ物をしております。

続 破折器具除去

こんにちは、井関です。

先日、久々に根管内で器具が破折している症例に遭遇しました。

破折器具は論文によると、4,5ミリを越えるといきなり除去するのが難しくなると 言われています。
レントゲンを見るとかなり長いことがわかります。

マイクロスコープを用い、なんとか無事除去することができました。
今まで除去した中で最も長い破折器具の一つだと思います。
無事除去することができてよかったです。

除去した破折器具がこちらです。
右の棒はプローブと言って、歯周ポケットを測る時に使う道具ですが、 1目盛が3ミリになっています。
こうするとおよそ4,5ミリくらいではないかなと思います。

最終的にはいつもの様にMTAセメントで根管充填をして終了です。
右側の奥歯も治療しました。
術前にあった疼きや痛みも消失しました。
うまく治すことができて良かったです。

サイナストラクト(フィステル/歯茎にできる膿の袋)

こんにちは、井関です。

最近、歯茎が腫れているという患者様が続けざまに来院されました。
その中の、お一人の方のお口の中を見るとこのような状態でした。

この歯茎が腫れているのは炎症が起きているからなのですが、
腫れの真ん中によく見ると小さな穴が開いてます。これは何かというと、根の先に溜まった膿が歯茎から出た穴なのです。なのでこの膨らみを押すと膿が出てきたりします。

以前はこれを「フィステル」と言っていましたが(今でもこの言葉を使う先生もいます)、 最近は「サイナストラクト」という言葉になりました。
歯内療法の世界では、もうフィステルという言葉は使わなくなりフィステルと言うとちょっと 恥ずかしい感じです。
ちなみに日本語では瘻孔(ろうこう)と言います。

特徴的な症状としては、
強い痛みがあることは稀で、大抵体調が悪い時や疲れている時にズーンと重い感じがする。
腫れが出たり消えたり(小さくなったり)する。
変な味がする。

では、どうやったら治せるのかというと、
通常の根管治療を行えば治ります。
根の先の膿の原因は、根管内に細菌がいるからで、その細菌を除去してしまえば自然にこの サイナストラクトも消えます。

1回目の根管治療後、3日ほどで歯茎の腫れ(サイナストラクト)は消えましたので 2回目で根管治療は終了です。
右の写真は根管治療を終えた後、土台を立てたところです。
はっきりと治っていることがわかると思います。

術前のレントゲンです。
赤の矢印の先の白いのは、サイナストラクトから造影性のある棒を入れています。
これによって膿がどこから出てくるか見つけることができます。
そうすると、一番奥の歯の根の先に向かっていることがわかります。
根の先が黒くなっている所に膿が溜まっています。

根管充填後のレントゲンです。
MTAセメントで充填しています。
根の先端まできちんと入っていることがわかると思います。
まだ根の先の黒い影は無くなっていません。
これがもとに戻るには6ヶ月から1年くらいかかります。

最後にセラミックの被せ物をして終了です。
治療回数は5回でした。

同様の症状でお悩みの方、是非ウケデンタルオフィスにご相談ください。

当院の精密根管治療について詳しくはこちら

巨大な穴 – MTAセメントによる抜歯回避

こんにちは、ウケデンタルオフィスの井関です。

先日、大学時代の友人から診て欲しい患者様がいると紹介を受けました。

友人曰く、その患者様は某大学病院で根管治療をしたのち歯を抜いた方が良いと言われたそうです。しかし、歯を抜きたくないので自宅の近くの友人の歯科医院をセカンドオピニオンで訪れたそうです。

友人は、仮の蓋を外したら出血がすごい為、何も見えずどういう状況か分からないくらいだったそうです。おそらく根の中で穴が空いてるのではないか?と言い、自分では治すことができないので、「井関、どうにかならないか?」と紹介を受けました。

このような紹介を受けるとテンションが上がります。しかし、そのプレッシャーは半端ないです。治せなかったら、井関はたいしたこと無いなと言われてしまうからです。

その患者様がいらっしゃいました。

仮の蓋を取ってみると、やはり大出血で何も見えませんでした。なんとか出血を止めると、根の中に巨大な穴が空いておりました。そして、得意な?大好きな?MTAセメントでこの穴を埋めました。

そうすると度々歯茎が腫れていたと言ってた部位が、一切の症状がなくなったと言っていただけました。

その後、樹脂で土台を立て、ジルコニアというセラミックの被せ物をしました。

正直、ここまで歯に穴が空いていれば抜歯という選択肢が普通だと思います。

しかし、MTAセメントを用いればもしかしたら治癒する、もしくは延命が出来る可能性は高いと思います。

逆に、MTAセメントが無ければ出来ない治療だと思います。

実際どれくらいもつのか?という予後に関しては現時点では申し上げることは出来ませんが、同じ様な状態の方がいらっしゃても、いきなり抜歯という事態は避けられると思います。

やはりMTAセメントは素晴らしいです、凄いです。

側枝って何?

こんにちは、井関です。

歯の中には、神経と血管の通り道である「根管」が存在します。
そして、根管には必ずと言って良いほど横道が存在します。
それを「側枝」と言います。

今回はこの「側枝」について話をしたいと思います。 イメージとしては下の図の様な感じです。

まず、なぜ側枝があるのかというと、歯が出来るときは歯の頭(歯冠)からできていって、だんだんと根っこ(歯根)が出来ていきます。
その過程で血管の一部が取り残されてしまった部分が側枝になるのです。

イメージ図でははっきりと分かる様になっていますが、実際は側枝はものすごく細くてマイクロスコープを使っても見えません。
(稀に太い側枝もあって見えることもあるそうですが、私は一度も見たことはありません)通常であれば、側枝があろうと問題がないのですが、そこが感染ルートになってしまうと厄介なのです。

では治せないのでしょうか?

下のレントゲンをご覧ください。

黄色矢印の先に黒い影があります。ここは通常出来る根尖病変ですが、 根の横の赤矢印の先にも黒い影がありますよね。ここが側枝からの感染による病変です。

おそらくですが、青矢印のあたりのどこかに側枝があるわけですが、レントゲンでも見えません。 ちなみにこのレントゲンは治療後です。根管内はMTAセメントで根管充填されています。
側枝があると思われるところに何も入ってないことが分かるかと思います。
そうです、側枝は一切触ってないのです。

側枝を触らなかったけど、どうなったのでしょうか?
11ヶ月後のレントゲンです。

矢印の先にあった黒い影(病変)は無くなっていますね。

結論は、主である根管をしっかり治せば、副である側枝、及びその先の病変は自然に治るというわけです。

世界の根管治療の費用

こんにちは、井関です。

先日、名古屋で開催された講演会に行きまして、そこで根管治療のレジェンドである寺内先生の話を聞きました。

根管治療のテクニックや私の大好きなMTAセメントの話があったのですが、その前にまず経済の話をしますと言って講演が始まり、その内容というのが歯科業界にいる自分でさえ、「へー、世界はそうなんだ。日本の歯科界は世界と比べるとこんなにも差があるのか」と衝撃を受けました。

世界には根管治療だけを行う歯科医師はたくさんいます。
日本にも数は少ないですが根管治療専門医と言われ根管治療のみを行う歯科医師はいます。しかし、その先生たちは、全て自費でしか治療をしていません。

もし仮に全て保険治療でやったらどうなるでしょう?

間違いなくすぐにその歯科医院は潰れます。

何故でしょう?

それは根管治療の保険点数は特に低いのです。

この話は当院でも最初にいらした患者様には必ずさしていただくのですが、日本では国民健康保険というものが存在し、保険料を払えばどんな人でも一定基準の治療を日本中どこでも受けられます。
これはこれで素晴らしい制度だと思います。

例えば奥歯の根管治療であれば、およそ9000円です。
この9000円は医院が得られる金額で、3割負担の人であれば2700円の支払いになります。1割負担の人であれば900円で済むわけです。

では、世界はどうなんでしょう?

アメリカでは一般の歯科医師であれば10〜15万円、根管治療専門医だと20万円以上で有名先生であれば30〜50万円

イギリスは10万円

日本より後進国と思われているマレーシアでも日本の保険治療と同じ治療をして8万円

いかに日本の保険治療の費用が安いかがわかると思います。

私は、世界で一番高い費用なのは当然アメリカだと思ってたのですが、寺内先生の話だと、違ったのです。

いったいどこの国だと思いますか?

答えは香港です。

ビックリしました!
なんと、27万円だそうです。
香港のトップの先生が27万円ではなく平均で27万円だそうです。

そうなると香港では日本と同じことをしても30倍の収入になるわけです。
逆に考えると同じ収入を得るためには、香港の先生が1人の治療している間に日本では30人を治療しないといけないわけです。
物理的にどうやってもこれは不可能ですよね?

そうなるとその差はどこに出るでしょう?

治療の質です。つまり成功率に差が出てきます。

例えばアメリカの根管治療の成功率は楽に90%を超えてきます。
日本ではというと?
たったの45%です。

しかも再治療であれば、更に成功率は下がります。

当院が目指すところも、当然ながら世界基準の治療です。
世界基準の治療をするためには、設備、技術、知識が必要です。
そして、どうしても時間が必要なのです。

昨年よりウケデンタルオフィス神谷町院は保険治療をやめ自費治療だけを行うようにしました。
それは何よりも患者様の歯を治したいからです。
ご理解を頂きたく思います。