歯根端切除術とは?治療内容と実際の症例(体験談)を解説
歯根端切除術とは?
歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)とは、歯の根の先端を切除する手術です。根管治療(歯の神経を取り除き、内部を清掃する治療)では治らない病変に対し、外科的にアプローチする治療方法として行われます。
この術式は、主に歯を残すことを目的としており、以下のような流れで行われます。
1.局所麻酔をかける
2.歯ぐきを切開して根の先端にアクセス
3.病巣と一緒に根尖部(根の先端)を切除
4.根の断面に薬剤を詰めて密封(逆根管充填)
歯根端切除術は、抜歯しかないと言われた歯を救う可能性のある治療として注目されています。
なぜ歯根端切除術が必要なのか
根管治療を行っても症状が改善しない場合、歯根の先に炎症や膿が残っていることがあります。このような場合、再度の根管治療では十分な効果が得られず、病変が慢性化することも。
「この歯はもう抜くしかない」と言われた方にとって、歯根端切除術は最後の砦となりうる治療です。レントゲンやCTで根尖部の状態を診断し、再感染の有無・根管内の異物の存在・歯の保存可能性を見極めたうえで、医師が判断します。
歯根端切除術で歯を残せる可能性
歯根端切除術は、抜歯を回避できる可能性がある治療法です。研究によると、成功率はおおよそ80〜90%とされており、条件が整えば長期間にわたって歯を機能させることが可能です。
たとえば「膿が何度も再発して他院で抜歯をすすめられたが、当院で歯根端切除術を行い保存できた」というケースも少なくありません。
歯根端切除術が必要なケース
根管治療では改善しない根尖病変がある場合
根の先に「膿や炎症がたまっている状態(根尖病変)」で、通常の根管治療では治らない場合に、歯根端切除術が必要となります。違和感が残る・腫れがひかない・痛みが慢性化するといった自覚症状があることも。
レントゲンやCTで根の先に黒い影が確認される場合、病巣の存在が疑われます。
再発性の根尖性歯周炎(病巣の再感染)
根管治療後に再び膿が出るなどの再感染が起こる場合、歯根端切除術が選択されることがあります。原因としては、治療で汚染が取り切れていない、根の途中で器具が折れてしまっている、穿孔(穴が空いてしまった)などが考えられます。
このような場合、外科的に病変とその原因を取り除くことで、症状の再発を防ぎます。
根尖部に嚢胞(のうほう)や異物が確認される場合
嚢胞とは、根の先端にできる袋状の病変です。小さなものでも、放置すると歯を圧迫したり骨を溶かしたりすることがあります。
また、根管内に器具の破折片が残っている場合なども、歯根端切除術で取り除く必要があります。
外科的にしか治療できない歯根の形態異常・湾曲がある場合
歯根の形が複雑だったり急な湾曲があったりすると、器具が根の先まで届かず、通常の治療が困難です。こうした場合は、マイクロスコープやCTで精密に状態を把握し、外科的なアプローチが唯一の解決手段となることがあります。
歯を残したいが、抜歯と言われた方の選択肢として
「もうこの歯は無理」と言われた方でも、他院では適応外だった歯が、歯根端切除術で救われたという症例は少なくありません。
歯を残すことを希望される方にとって、セカンドオピニオンの取得も大切です。当院では可能な限り歯を残す方向で治療提案を行っています。
歯根端切除術の流れと治療内容
1.診断・カウンセリング
CTやレントゲンで病変部位を確認し、治療方針を決定します。
2.局所麻酔
処置部位に十分な麻酔をかけ、痛みのない状態で進めます。
3.歯ぐきの切開と病巣へのアプローチ
歯肉を切開して、病変や根の先端を目視で確認します。
4.根尖部の切除と逆根管充填
病巣とともに根の先を切除し、根の断面に薬剤を詰めて密閉します。
5.縫合と術後のケア
歯ぐきを縫合し、術後のケア・薬の処方・生活上の注意点を説明します。
歯根端切除を伴う根管治療症例①(体験談)
K.Oさん(45歳女性/千葉県市川市 会社員)
ホームページを見て来院
主訴
左上の歯茎が痛い
3回も治療したが、歯茎の腫れが引かない、ジンジンした感じが続く。
診断
左側上顎第一小臼歯根尖性歯周炎、およびフェネストレーション
治療
H26年9月1日初診
レントゲンでははっきりとした原因はわかりませんでしたが、CTを取ってみると原因は明白でした。
フェネストレーションと言って、根の先が骨から出てしまっているのです。
神経を抜く前は、この状態で特に問題が無いのですが、神経を抜くと通常の根管治療ではほぼ治らず、歯根端切除術を行わないとまず治りません。 今回の症例では、CTを取った時にフェネストレーションが判明していましたが、歯根端切除だけで治るとは限りません。
まずは、マイクロスコープ下で根管内の感染物質除去とクリーニングを行い、基本となる根管治療をしました。しかし、やはり症状の改善は見られませんでしたので、根の先をわずか3ミリ程度切除しました。
H27年1月16日
セラミッククラウンを装着し、計6回で根管治療が終了しました
治療後には症状も落ち着きました。
赤丸で囲んでる付近に症状があり、ひどい時には目の付近まで腫れ上がってる感じがしたそうですが、口腔内には目立った症状はありません。
赤丸で囲んだ部分が原因であるにも関わらず、レントゲンでは異常をきたす所見はありません。
CTで見たときも悪い黒い影は見当たりません。 黄色の矢印は骨です。
しかし、赤の矢印の部分の根の先端は骨から少し出てるような感じがします。これだけでは、確定的な診断は出来ませんが、「フェネストレーション」の疑いはかなり強いです。
これが治療前の状態です。
まずは以前に詰めてある根管充填材を全て除去し徹底的に根管内をきれいにしMTAセメントで埋めなおします。通常はこれだけでほぼ治るのですが、全く治りませんでした。
ここで、もう根管内からの治療では治らないと判断し歯根端切除術をすることにしました。
歯根端切除術後です。根の先端が短くなっているのが分かると思います。
施術名:精密根管治療
施術の内容:根管治療 + 歯根端切除術
施術の副作用(リスク):治療後に疼痛、咬合時痛、冷温痛、腫脹、出血、むくみ、神経麻痺、血管損傷を生じる事があります。
症状によっては抜歯が必要な場合があります。
施術の価格:¥197,200
歯根端切除を伴う根管治療例②
T.Hさん(40歳男性/神奈川県小田原市)
ホームページを見て来院
主訴
何年間も右上に違和感。歯茎も腫れて、膿も出ている。歯がグラグラもしている。
近医で抜歯と言われてが、絶対に抜歯はしたくない、なんとかしてほしい
診断
右側上顎第二小臼歯、および右側上顎第一大臼歯根尖性歯周炎
治療
H25年7月19日初診
マイクロスコープ下で根管治療を行い、感染物質の除去、クリーニングを行うも右上の歯茎の腫れは変わらず、根尖孔外の感染が疑われたので、歯根端切除術を前提としたMTAセメントでの根管充填を行いました。その後、歯根端切除術を行いました。
次の診察時には歯茎からの膿も無くなりました。
H26年3月14日
セラミッククラウンを装着して治療が終了しました。
治療終了後8カ月では明らかな骨の改善が見られます。
赤矢印の部分が骨が吸収しているところです。歯茎からは膿が出て、ずっと違和感を感じているとのことでした。
徹底的に根の中のクリーニングを繰り返しましたが、改善することはありませんでした。
ということで、歯根端切除を行うこととしました。
右のレントゲンは、歯根端切除術前に根の中の治療を終えて、MTAセメントを詰めたところです。
MTAセメントを詰めたところから歯根端切除術後を見ていただければ、根が短くなっているのが分かると思います。
歯根端切除後にはぽっかりと穴が開いてますが、その穴には人工骨など何も入れたりしません。
歯根端切除術を行った次の日には、歯茎からの膿が止まり、違和感も全くなくなりました。
施術名:精密根管治療
施術の内容:根管治療 + 歯根端切除術
施術の副作用(リスク):治療後に疼痛、咬合時痛、冷温痛、腫脹、出血、むくみ、神経麻痺、血管損傷を生じる事があります。
症状によっては抜歯が必要な場合があります。
施術の価格:¥164,400
歯根端切除を伴う根管治療例③
M.Iさん(49歳女性/東京都新宿区)
ホームページを見て来院
主訴
右下奥歯を5年前に治療した直後から違和感。
2年前から膿が出ていて、近医を受診したところ、根にひびが入っているかもしれない。
ひびが入っていたら抜歯と言われた。昨年からは、歯茎から膿が出たり出なくなったりを繰り返している。
最近はしこりみたいになってきた。抜きたくないがどうにかならないか?
診断
右側下顎第一大臼歯根尖性歯周炎
治療
H27年5月29日初診
マイクロスコープ下で、感染物質の除去とクリーニングを繰り返したところ、2回目の来院時には歯茎の腫れは無くなりました。しかし、近心根はかなり弯曲していて、本来の根管が見つかりません。そこでこれ以上の根管内からの治療は難しいと判断し、近心根のみ歯根端切除を選択しました。
歯根端切除術後は症状が改善し、その後セラミッククラウンを装着し、計7回の治療でH27年9月25日に治療が終了しました。
施術名:精密根管治療
施術の内容:根管治療 + 歯根端切除術
施術の副作用(リスク):治療後に疼痛、咬合時痛、冷温痛、腫脹、出血、むくみ、神経麻痺、血管損傷を生じる事があります。
症状によっては抜歯が必要な場合があります。
施術の価格:¥197,200
歯根端切除を伴う根管治療例④
R.Tさん(47歳女性 千葉県浦安市 主婦)
ホームページを見て来院
主訴
以前治療した歯が痛い
診断
左側上顎第二小臼歯、右側下顎第一大臼歯根尖性歯周炎
再根管治療をしても治る可能性は低そうであり、ファイバーポストが入れてあるので、除去するのが難しい。
またセラミッククラウンは最近入れたものなので、外すのはもったいない。
治療
H23年6月
右側下顎第二大臼歯の歯根端切除を行いました。切除した部分にはファイバーポストがあったので、逆根管充填はしませんでした。
左側上顎第二小臼歯の歯根端切除では、切除した部分に逆根管充填をMTAセメントで行いました。
6カ月後、骨の再生が認められ、どちらも良好な結果が得られています。
施術名:精密根管治療
施術の内容:歯根端切除術
施術の副作用(リスク):治療後に疼痛、咬合時痛、冷温痛、腫脹、出血、むくみ、神経麻痺、血管損傷を生じる事があります。
症状によっては抜歯が必要な場合があります。
施術の価格:¥43,200
| 治療内容 |
歯根の先端が汚染されている等の問題がある場合に、根管治療を続けても経過が悪かったり、詰め物を除去できず根管治療自体が難しい際に、歯根の先端、もしくは先端周辺の嚢胞を切除します。 根管治療を伴う場合には、CTにて歯の根の状態を確認、マイクロスコープで実際の患部を確認したうえでニッケルチタンファイル、ラバーダム、MTAセメントなどを用いて治療を行います。 |
|---|---|
| 料金 |
前歯:¥110,000 小臼歯:¥132,000 大臼歯:¥154,000 |
| リスク・ 副作用 |
歯根端切除術を行っても症状が改善しないことがあります。その場合、再び歯根端切除を行う、もしくは抜歯になってしまう可能性があります。 MTAセメントを用いた治療の可否は歯の状態によります。 |
ウケデンタルの歯根端切除術が選ばれる理由
2005年の開院から19年の実績
ウケデンタルは、創業から患者様第一の治療方針に基づき、最新の技術と設備を用いた質の高い歯科治療を提供し続け、地域の皆様の健康を守り、信頼を築いてきました。
定期的な研修で技術を向上させ、多くの患者様の笑顔を取り戻すことに努めております。
これからもウケデンタルは、その信頼と実績をもとに皆様の健康をサポートしてまいりますので、ご相談やお問い合わせはいつでもお気軽にどうぞ。
最新の歯科治療で難症例にも対応
日本の歯科治療の水準は、海外に比べると残念ながら高いとは言えない現状があります。
ウケデンタルオフィスでは世界水準の最新技術を積極的に導入しています。もちろんそれを使いこなすための医師の技術力の研鑽にも力を注いでいます。
「他院で断られてしまった」「一度治療したが歯の調子が良くない」という方も諦める前にぜひご相談ください。
「歯を残す」を第一に
ウケデンタルオフィスは「自分の歯を残したい」「抜歯を宣告された…」という方のために、現代歯科医療の先進機器・技術を用いて、可能な限り歯を抜かない治療を行っています。
日本でも導入の少ない歯科用内視鏡、歯科用CTスキャンやマイクロスコープ、レーザーなどを駆使して精緻な診断・治療を行い、誠心誠意、歯を保存する可能性を追求します。
歯根端切除術の成功率やリスクは?
成功率を高めるために重要なこと
歯根端切除術の成功率は80〜90%前後とされています。成功には以下の要素が関係します。
・術前の精密診断(CT・マイクロスコープ)
・経験豊富な術者による処置
・無菌的な環境での手術
・高精度の逆根管充填材料の使用
当院ではこれらの条件を満たす体制を整えており、長期的な歯の保存を目指しています。
考えられる合併症やデメリット
・一時的な腫れ・痛み・出血
・感染リスク
・稀に再発や効果が限定的なケース
とはいえ、抜歯せずに自分の歯を守る可能性があるという点で、非常に価値の高い治療です。
よくあるご質問(Q&A)
-
Q
手術の所要時間はどのくらいですか?
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A
歯1本あたり、だいたい60〜90分ほどで終わることが多いです。歯の状態や治療の難しさによって、多少前後することもありますが、しっかりと時間をかけて丁寧に行いますのでご安心ください。
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Q
手術後の痛みや腫れはありますか?
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A
少し腫れたり、痛みを感じることはありますが、多くの場合、数日で落ち着いてきます。必要に応じて痛み止めや抗生物質も処方いたしますので、術後の不安な点も安心してご相談ください。
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Q
抜歯せずに歯を残す選択肢として有効ですか?
-
A
はい。なるべく歯を残したい方にとって、とても有効な治療法です。「抜歯しかないかも…」と悩まれている方も、まずは一度ご相談ください。あなたの歯を守るために、できる限りの方法をご提案いたします。